Koganeisite.net:小金井市民新聞Webサイト
紙面記事一覧地域の生活情報創刊にあたって記事のご投稿各種お問合わせトップページ
(2005年10月25日号記事)
INTERVIEW インタビュー
江戸東京たてもの園学芸員 佐々木秀彦さん
存続の危機から人気野外博物館へ
『たてもの園』は、地域住民が集う「町」を目指します
 小金井公園内に平成5年3月開園。年間約25万人が訪れる『江戸東京たてもの園』は、小金井を代表する人気野外博物館だ。現在、このたてもの園では「見る博物館から参加するコミュニティへ」の主旨の元、「住民」(ボランティア)を募集している。遊び心いっぱいのユニークな企画だが、その裏には、たてもの園の存続危機があったという。
そこで、今回は学芸員の佐々木秀彦さんに、現状と、これからの目標、試みについてうかがった。
―27棟の復元建造物を有する広大な「たてもの園」を管理する職員はわずか4名。運営には169名の正規ボランティアと、98名の臨時ボランティアの力が大きい。ボランティアを「住民」と呼び、野外博物館を地域のコミュニティにしようとする発想は大胆であり、画期的だ。ボランティア導入のいきさつは?
「きっかけは、東京都の政策があったからです。それに則って平成8年12月から募集を開始しました。具体的には、茅葺民家の囲炉裏の火を焚いたり、園内のガイド、紙芝居や折り紙教室など、様々な活動をしてもらっています」
―平成13年で75名の正規ボランティアが、15年で202名と飛躍的に増えた。その理由に、運営の大幅な改革があったと聞くが?
「12年度に行われた東京都事務事業評価(都税を使う施設などの運営状態を分析・検証する制度)
で、A〜Eのうち、「抜本的な見直しが必要」なD評価を受けました。その下のEは廃止ですから、非常に厳しい結果です。それによって予算と人員が削減され、ボランティアに頼らざるを得なくなったというのが正直なところでした」
―状況的にかなり追い込まれたと?
「スタッフが減り、園内に目が行き届かなくなると、障子を破られたり、ものがなくなったりと目に見えて荒れ始めました。このままではゴーストタウンのようになってしまう。まさに背水の陣といった状態でした」
―勧告を受けた12年度の年間入場者数が約17万人。翌年になると26万人弱と飛躍的に上がっているが?
「これは13年の夏に公開したジブリ映画『千と千尋の神隠し』の効果です。映画の中に出てくる湯屋が、たてもの園の『子宝の湯』をモデルにしたことで、入場者数が一気に増えました。我々にとっては嬉しい偶然となりました」
―宮崎駿監督は、「たてもの園」の苦しい状況を知っていたのか?
「はい。キャラクターの『えどまる』を書いて頂いたり、たてもの園の本をジブリに作ってもらったりと、以前からお付き合いがあり、園がかなり困っているということもご存知でした。映画の記者発表の会場や、テレビ番組のロケ地にたてもの園を使い、知名度を上げることに力を貸して下さいました」
―園存続の大きな起爆剤になったと?
「幸運だったと思います。ただ、我々は人数が減ってしまった状態でお客さんを受け入れなければなりません。かといって、お金を使って人を雇う余裕はない。ボランティア数を増やし、力になってもらいました」
―『千と千尋』効果は2年間続いた。
「その間に、職員とボランティアで、ブームが終わった後どうするかを一緒に考えました。そのとき出た企画が、夜間開園の『夕涼み』です。『千と千尋』の展覧会がそろそろ終わるという頃、映画のシーンにある提灯がずらりと並ぶ夜の風景をモデルにしたらどうかというのがひとつ。また、7月は前半が梅雨、後半は夏休みに入ったばかりで遠出の行楽へ行ってしまい、お客さんが少ない時期。この『夏枯れ』対策もありました。
話し合いの中で、提灯を並べてお祭りのようにするなら、夜店を出したらどうかということになり、商工会にお願いしてボランティアと商工会の合同で二日間の開催を決定。初日は1万336人、二日目は7663人に来園していただきました」
―企画は当たった?
「過去7月の最高入場者数が9000人。それを一日で越えてしまったのですから大成功どころか、もうびっくりしました」
―この試みで手応えを感じたか?
「いちばん反省したのは、今まで管理するだけで『園の魅力は何か』を突き詰めて考えなかったことです。7月は来園者が少ないという前提に縛られていました。
たてもの園は、もともとリピーター率がいいんですね。『千と千尋』のお蔭で知名度は上がりましたから、どんな企画だったらさらに園の魅力を引き出せるか、それをどうしたら実現出来るかの方向性が見えて来ました」
―それが、地域と連携することだった?
「我々は『お神輿モデル』と呼んでいるのですが、今までは職員と雇われたスタッフで、たてもの園というお神輿を大事に担いでいるだけでした。その担ぎ手がひとり減りふたり減り、ついに担げないところまで来て、止めてしまえば? と都から勧告された。そのとき、回りにいたボランティアの方たちが、俺たちが一緒に担ぐよと肩を出してくれ、さらに商工会や地元の皆さんが参加して盛り上げてくれました。だからこそ夕涼みは成功したと思うんです」
―子宝湯前にある空き地に土管を置き「原っぱ」にしたのも、お神輿モデルの一環だそうだが?
「それも逆転の発想です。あの空き地には、4棟建物が立つ予定があります。部材もあり再建する準備も整っているのだけれど、運営の見直しで計画がストップした状態なんです。また、冬の来園者数も少ない。低予算で冬にできるイベントはないか。それが、べーゴマや竹馬など、昔懐かしい遊びができる原っぱだったんです。これも、ボランティアの方の提案がきっかけでした。お蔭様でブレイクし、今後も冬の名物として定着させていくつもりです。
学芸員の立場からいうと建物が建たない状況は複雑なのですが、お客さんが喜んでいることは間違いないので…(笑)」
―ボランティアを中心とした地域運営が確立しつつあるが、将来的な計画、夢は?
「たとえば、農家の畳で昼寝をしたり文房具店で買い物したりと、見るだけではなく生活体感のある博物館へ。お客さんが身近な田舎、近所の親戚のような感覚で遊びにこられる場所にしたいです」
―子宝湯に入りたいという希望も多いと聞く。
「将来的にはぜひ、実現したいですね。現在でも、ボランティア運営の写真館は、七五三や成人式のときに賑っています。人々を惹きつけるたてもの園の潜在能力はいっぱいありますから、それを引き出していくのが我々、職員の使命です」
―佐々木さんが個人的に好きな場所は?
「縁側が好きですね。僕は浅草生まれで、小学生のときに千葉の新興住宅に移ったのですが、引っ越したとき無味乾燥で嫌でしょうがなかった。生活体験としては、銭湯に行ったり原っぱで遊んだ浅草のほうがずっと強い。ですから、たてもの園に人が集まり、楽しんでいる様子を見ると、本当に嬉しくなります」
―職員は少なくハードワークだと思うが?
「疲れて死にそうなときもあるけれど(笑)、楽しくてしょうがないです。苦痛にはならないし、今が頑張りどころだなと思っています」

(コラム)
たてもの園住民募集
たてもの園では、職員と一緒に「町造り」をしてくれる住民(ボランティア)を募集している。
『家主・家族』(正規ボランティア)※今期は30名募集/18歳以上で、ボランティア講習を受け、曜日ごとの班に所属。月3回以上の通勤が可能な方。年会費200円。
『親戚』(臨時ボランティア)※随時募集/18歳以上・保護者の承諾を得た13〜18歳未満。ボランティア講習を受け登録。
『子ども会』(子どもボランティア)※随時募集/保護者の承諾を得た小学3〜6年生で、2日間の養成講座に参加して登録。
『友人』(友の会会員)※随時募集/年会費1500円=年間フリーパス。特典など詳細はホームページにて掲載。
http://www.tatemonoen.jp/
問い合わせ先/TEL042-388-3300

紙面記事一覧地域の生活情報創刊にあたって記事のご投稿各種お問合わせトップページ