武蔵小金井駅南口再開発が迷走を始めた。施行者である都市再生機構は、7月5日付の権利者向け文書で、事業計画の変更を国土交通省に認可申請する旨を通知。変更計画によれば、駅前ロータリーの南側に予定するJRビルを大幅に削り、その部分に他の地権者向けの雑居ビルを割り込ませる内容となっている。稲葉市長は、これまでの計画通りに実現できると繰り返してきたが、改めて事業認可済みの当初計画の妥当性が問われることになりそうだ。なお、雑居ビルへの入居を求められることになる複数の地権者は「(変更について)何一つ説明がなかった」と反発しており、権利者調整が済んだ上での変更ではないことも明らかになっている。都市再生機構は「軽微な変更」であるとし、縦覧や意見書提出などの手続きは行なわない考え。
7月5日付の権利者向け文書では、主な変更点は、@事業施行期間を、平成19年度から平成20年度に変更、A住宅・専門店棟(1―2街区)について、4階部分を専門店から住宅(マンション)に用途変更、B各棟の建物、設備等の形状及び位置について、現在の設計内容に合わせて変更、の3点。(仮称)市民交流センターのホール等の形状も変更される。
この内、JRビルの変更は、Bに該当する。
当初計画では、JRビルは、1―3街区に、(仮称)市民交流センターと一筆一棟の建物として建造が予定されていた。しかし、今回の変更案では、JRビルの南側を大幅に削り、その場所に複数の地権者の権利床が入る雑居ビルを分棟して建設する方針。
7月5日付文書に添付された図面によると、変更後の床面積は、JRが駅前ロータリーに面して3992uを権利床として取得し、雑居ビルは裏通りに面して1818uを権利床として取得するとの配分になっている。
関係者によると、この雑居ビルには、現再開発計画に異論を持つ複数の地権者を入居させることを意図して変更案が作成された模様。しかし、当の関係地権者には全く説明がなかったことから、逆に強い反発を招いている。
現段階で、市議会の担当委員会には変更の報告はなされていないが、 都市再生機構は、「7月上旬に、国土交通大臣に変更認可申請をする」としており、すでに手続きに入っているものと見られる。国土交通省が変更を認可するかどうかについては現時点で不明。
稲葉市長は、権利変換計画認可申請は、評価基準日の「賞味期限」が切れる8月までに「一発で決めたい」としてきた。しかし、大幅な事業計画の変更が生じ、当該変更に権利者の合意が得られる見通しもないことから、8月の申請は困難だとの見方が強まってきている。
市民からは「与党が多数になれば、計画通り再開発は進むと聞いてきたが、事業変更ですか?」「都議選が終わった直後に事業計画変更というタイミングに政治的意図を感じる」などの声が出始めている。
【解説】
武蔵小金井駅南口第1地区第一種市街地再開発事業は、本年1月に国土交通省より事業認可され、2月に評価基準日を設定、8月に権利変換計画認可に向けての縦覧というスケジュールが示されてきた。
稲葉市長は、現計画には関係者・権利者の合意を得ており、市議会だけが反対していると主張、3月の市議選においては、現計画推進の与党議員が過半数を占める結果となった。
今回の事業計画変更は、現計画に異論を持つ権利者対策としての色彩が強く、現計画では、権利者の合意を得ることができない(着工ができない)ことが改めて明らかになったものと言える。
この変更が権利者の合意に基づくものであれば、変更をもって事業が動くことも考えられるが、実際には、直接の影響を受ける権利者に説明もないままの変更認可申請となったため、事態は変わらない可能性が高いと思わざるをえない。
東小金井駅北口土地区画整理事業では、学識経験者2名と賛否双方の地権者をメンバーとする「まちづくり協議会」が設立され、計画の見直しを議論、「取りまとめ」が答申された。
武蔵小金井駅南口においても同様の方式を選択するか、あるいは、「冷戦」状態を続けるか、今後の方向性が注目されるところである。