「スタジオジブリ」「サンライズ」「ガイナックス」は、日本を代表する三大アニメ制作会社といわれている。そのうち、スタジオジブリとガイナックスは小金井市に拠点を置く。そこで、今回は、『新世紀エヴァンゲリオン』を代表作に持つガイナックスを訪ね、統括本部次長の神村靖宏氏に、事業内容や会社の雰囲気、などをうかがった。
―ガイナックスは、アニメ制作の他に、ゲームソフト制作、コスプレ(キャラクターの格好をする)ファンも多く集まるイベントなど、事業を幅広く行っているが?
「もともと『面白いことは何でもやってしまおう』という学生のアマチュアグループが立ち上げた会社なんです。ですから、作品を介してお客さんと向き合うだけでなく、これも面白がってもらえるじゃないかというスタンスで、ゲームソフトやキャラクター商品の制作、イベントなども手掛けています」
―昨年末に設立二○周年を迎え、大きなイベントを開催した。
「ひとつの区切りですので、お客さんにも我々自身に向けても、頑張りましょうという意味合いを込めて開催しました。二十周年を記念した作品群のお披露目でもありました」
―ジブリ、サンライズとともに日本アニメ文化を担う会社と評判だが?
「世界で注目されているのは、宮崎(駿)さんの作品なわけで、うちはどうでしょうか(笑)。確かに、近頃注目されているという実感はありますが、アニメが国や都がいっているように『日本が世界に誇るコンテンツ』かどうかはよく分からないですね。そういわれるようになって、まだ数年しか経っていないし、日本のアニメの現状は大きく変わってきていますから」
―どう変わって?
「流行るキャラクターも変わりましたし、お客さんがアニメに求めているものも随分変わってきたのではないかと。『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』が流行った頃は、ファンである自分たちをどうやって社会に認めさせるか、遅れてきた学生運動のようなところがあったと思うんです。今は少なくともそれはないですね。もう少し判り易い娯楽、消費的な意味でのコンテンツを求めているような気がします」
―そのような風潮の中で作る意気込みは?
「良くも悪くもですが、力の入った作品であればあるほど、作り手の気分が反映されたものになります。ですから、世の中にあわせていくのではなく、今の自分たちをいかにストレートに出せるかの勝負! みたいな部分はあると思います。
山賀(代表取締役)をはじめとするクリエイターたちは、いかに『俺様が俺様たるか!』というのが命題かもしれませんね(笑)」
―そういった気概あるクリエイターたちに惹かれてスタッフも集まってくる?
「いいものを作るといいスタッフが集まってくるというのは、前提条件みたいなものでしょう」
―プロジェクトごとに社外からも人材を集め、チームを構成するのがガイアックスの仕事のやり方だと聞く。一般企業に比べて会社の雰囲気は?
「経理、流通関係、権利ビジネスといった部分では他の会社とさほどの違いはないと思います。しかし、作品を作る部署は一般企業とはかけ離れていますね。勤務時間の拘束もゆるいので、制作スタジオは夕方近くまで(人がいなくて)ガラ〜ンとしていますよ(笑)。作品を作るスタッフのモチベーションは会社を運営することではないし、会社の利益ですらない。自分が担当する作品でいかにウケを取るかです。仮に十分集中して良い作品を作るために、残りの二十三時間五十分はぼんやりする必要があるなら、会社としてはそれでOKなんです」
―自由な反面、実力主義の厳しい世界では?
「トップに近くなるほど厳しい環境に自分を置いているでしょうね。ただ、自分たちが学生サークルの気分そのままで良い作品が作れるのなら、それがいちばんいいというのも一つの考え方かもしれません」
―今年四月、東京国際アニメフェアのオリジナルビデオ部門で「トップをねらえ2!」が優秀作品賞を受賞した。励みに?
「作品を認知して頂くという意味ではありがたいかなと。ただ、まだ完成していない作品なので、作品の評価としては、これからですから。スタッフのモチベーションは、受賞などとは別のところにある気がしますね」
―モチベーションが上がるときとは?
「やっぱりウケたときだと思います。ウケたというのは多分、賞ではない。結果として作品の売上実績かもしれないですけど、金額ではなく、多くの人が見てくれたことが喜びとして大きいです」
―会社は一昨年に吉祥寺から移転。小金井を選んだ理由は?
「便利さと家賃の兼ね合いですね(笑)。日本のアニメスタジオの半分以上は、中央線や西新宿線・池袋線沿線に集中しているんです」
―ジブリの近くということも選択肢に?
「ジブリの近くというわけではないですが、アニメスタジオの集まっている地域ですから結果的に。アニメ制作というのは、一社ですべてまかなえるものではありません。テレビシリーズなど当社だけでは制作力が足りないので、他社の力も借りることになります。アニメ制作現場は、製作過程でのコンピュータ化は進んでいますが、基本は今でも人海戦術。ですから、スタジオ同士がお互いに仕事を発注したり請け負ったりして回転してます。例えば、ジブリ作品の一部をうちで引き受けることもありますし、『新世紀エヴァンゲリオン』ではジブリさんに製作してもらった回もあります。この業界は横の繋がりで成り立っているんです」
―環境的に小金井は?
「スタッフにとってここは生活の場でもあるので、近所にコンビニや飲食店があるは便利です。ただ、吉祥寺にいた頃と比べると飲みに行く場所が…。社長の山賀なんかは毎晩飲みに出るタイプですからね(笑)」
GAINAX
(株)ガイナックス
【設立】1984年【代表取締役】山賀博之【従業員数】約60名【主な事業】アニメーションを主とした映像作品(TV、劇場映画、ビデオ)の企画・制作・販売。パソコン用ソフトウェアの企画・制作・販売。家庭用ゲーム機用ソフトウェアの企画・制作・販売。各種キャラクター商品の企画・制作・販売。
ホームページ
http://www.gainax.co.jp