中町在住の落語家、吉原朝馬さんは、役者として舞台でも活躍されているが、市内少年野球チーム「サンライターズ」コーチの顔も持つ。今回は、少年野球の話を中心にお伺いした。
―落語家になってどのくらい?
「10代目金原亭馬生に入門したのが昭和43年ですから、36年になります。主体は古典落語ですが、縁あって舞台を踏むこともあり、この間は照明や効果音、三味線などを入れた語り芝居というのもさせて頂きました」
―落語の世界に入ったきっかけは?
「笑いというものが好きだったので、そっちの道に進みたいと思っていました。その中で、テレビやラジオで落語を聞いて、あれなら私にもできるんじゃないかと。思えば失礼な話ですが(笑)」
―修行は大変と聞くが
「縦割り社会で色々理不尽なこともあるし、最初の頃は収入がほとんどない状態が続きますから半分くらいは途中で辞めてしまいますね。自分の場合はやはり落語が好きだったら耐えられたんじゃないかと。それはどの社会も同じでしょうけれど」
―小金井には?
「昭和53年からです。私は千葉の多古町出身で、こちらにはおばさんを頼ってきました。当時から比べると随分変りましたが、それでも他の市と比べるとまだまだ緑が多いところで住みやすいと思います」
―少年野球のコーチをしているそうだが
「サンライターズというチームで3年以下の子供たちを指導しています」
―そのきっかけは?
「息子が小学校2年生のときに野球をしたいといいましてサンライターズに入ったんですが、私も野球は好きなので父親コーチとしてチームに参加しました。息子が小学校を卒業してからはOBコーチとなり、コーチ歴は11年になります」
―ご自身も野球を?
「野球少年でしたし、千葉県はなんといっても長嶋茂雄さん… いや、長嶋様ですから(笑)。また、落語家になってからは『よいしょ〜ズ』という古今亭一門の野球チームがありまして、そこで年間30試合くらいやっていました。遊び半分の草野球でしたけど、若手だったので暇があったんですね。ユニフォームは3着あるのに本業の着物は2着という…。本当の話です(笑)」
―小さい子に教える楽しさ、大変さは?
「いろんな子がいますからね。本当に野球が好きで入ってくる子もいるし、友達と遊びたい、あるいはお父さんが好きで、お兄ちゃんがやっていたからと入部の理由は色々です。ただ、3年以下だと初めてやる子がほとんどですから、野球はこんなに楽しいんだよということを教えてあげるのが役割だと思っています。サンライターズのチームカラーは『伸び伸び楽しく元気にやろう』。その上で、ルールや礼儀を教えて、試合ができる形にもって行く。子供たちは監督やコーチの他に、先輩たちを見ながら色々学んでいきます」
―野球の楽しさは
「スポーツは何でもそうですが、自分が頑張れば勝てるというのがひとつ。それから、野球は9人いないと試合ができません。怪我などでひとり退場すると不戦敗になってしまいます。ですから、ベンチにいる控えの子も大きな役目があるんですね。『僕、今日は試合に出られないんだ』としょげていると『君がいるからみんな安心してプレイができるんだよ』といっています。みんな必ず役割がある。それがチームプレイ、野球の良いところだと思います」
―試合では親御さんも応援に熱が入るようだが
「親御さんの応援は子供たちの励みになります。特に低学年の子は、我々コーチの声よりお母さんの声のほうがよく届くので、お母さんが『走れ!』って叫ぶと走っちゃう(笑)。
応援のお母さん方を含め、野球連盟、審判員の方と、少年野球を支えてくださる皆さんには本当に頭がさがります。
ただ、お父さんは来られる方が少ないですね。事情があるのでしょうけれど、子供たちはお父さんがたまに見にくると本当にはりきります。私は父親コーチをやっていたせいもありますが、一緒に汗を流すと、投げる飛距離が伸びていく、バットの振りが速くなると子供の成長が手に取るように分かるんです。それは楽しいですよ。忙しいと思いますが、お子さんのために少しでも時間を割いていただけたらありがたいですね」
―サンライターズの有志が高座で小咄を披露したこともあるそうだが
「15周年の記念パーティのときが最初です。市長さんをはじめ、150人くらいの来客がありましたので、ちょっと変ったことをしようと、私の落語と、やってみたいと手をあげた子供たちの小咄を披露しました。小咄は本当に簡単な… 例えば『ウルトラマンさん、お電話ですよ』『じゅわっき』というものですが、ちゃんと半纏を着て、出囃子で高座に上がって頭下げて…。評判が良かったので20周年のときにもやりました」
―高座に上がったお子さんの反応は?
「大変だったでしょうね。緊張した子もいましたし。ただ、野球で小さな声しか出せなかった子がそれを機に元気に出せるようになったのは、嬉しかったですね」
―野球より落語に目覚めた子は?
「いや〜そこまでは(笑)。ただ、お年寄りやがいる施設などでそういうこともやってみたいなという気持はあります。子供が頑張っている姿はそれだけで和んだりしますからね。今は、土日は野球の練習で忙しいのでちょっと難しいですが…」
―土日に仕事がぶつかることも多いと思うが、仕事優先?
「そりゃそうですよ。じゃないとかみさんに怒られちゃう(笑)。でも、仕事が夜のときは昼間やってますよ。ノックしたりバッティングピッチャーをしたり。もっとも、低学年だからできるんで、高学年では無理でしょうけど(笑)」
プロフィール
本名・佐藤武。昭和24年、千葉県生まれ。43年10代目金原亭馬生に入門、翌年前座となる。前座名「駒八」。48年二ツ目となり、57年12月真打に昇進。4代目「吉原朝馬」を襲名する。古典落語の他に芸術座「たぬき」で山田五十鈴さんと共演するなど、舞台にも出演多数。